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読みがまったく見えなかった落合博満

三井康浩

著者:三井 康浩

1979年(株)読売巨人軍入団 1984年ドクターストップにより現役引退 1986年巨人軍二軍マネージャー 1987年スコアラー(一軍) 2011年査定室長 次長 2013年統括ディレクター 2017年編成本部参与 2018年12月末尾巨人軍退団 現在は講演会、講座、野球教室などを行っている

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本サイトは三井康浩氏による著書「ザ・スコアラー」の内容を、著者及び株式会社KADOKAWAより許諾を得て一部掲載しています。お買い求めは上記リンクが便利です。
※ 図版・テキストのレイアウト・表現など、本書と本サイトの内容は一部異なる場合があります。

 このように見逃し方を観察しながら、打者の考えていることであったり、その打者の性格だったりを見ていくのですが、その考えがまったく読み取れない選手もいました。その代表格が落合博満(おちあいひろみつ)さんです。落合さんはどんな球でも同じように見逃しますし、同じようにバットを出す天才的な選手でした。

 その落合さんで忘れられない試合があります。1989年8月12日、ナゴヤ球場での中日との一戦です。

落合博満がつくった罠

 抜群の安定感を見せ、この年20勝を挙げることになる巨人のエース・斎さい藤とう雅まさ樹き がこの日も快投を見せ、9回裏1死までノーヒットピッチングを継続。大記録達成に、あとふたりまで迫っていました。しかしここから乱れ、1点を奪われ3対1に詰め寄られます。どうにか2死までは漕こぎ着けましたが、三塁と一塁に走者を置き、この日4打席目となる4番・落合さんに打順がまわります。

 この日の落合さんは、なぜか引っ張りにかかっていました。しかし斎藤は球威のあるストレートでそれを許さず、1打席目は四球、その後はライトフライ、セカンドフライに打ち取っていた。

 この4打席目、斎藤は1ボールから、前の2打席の再現を狙いアウトコースにストレートを投げ込みます。直後、わずかに遅れて落合さんのバットが出てきて、このボールを的確にとらえます。落合さんらしい右方向への強い打球が伸び、右中間スタンドに飛び込みました。まさかの逆転サヨナラホームランです。

 この劇的な一打がなにを意味するのでしょうか? それは、なんの前兆も見せることなく、打ち方、狙い球、または打つ方向を変えてきたということ。つまり、最後の打席への布石を1打席目と2打席目でうまくつくられて、巨人バッテリーはまんまと落合さんの(わな)にかかったというわけです。もちろんこの試合でも、落合さんの打席におけるすべての動作を細かに観察していましたが、どこかのタイミングでなにかを変えたことをうかがわせる一切のヒントはなかった。

「え、なんで? 落合さん、今日はずっと引っ張りにきていたのに……」。唇を嚙かみ締めながら天を仰ぐしかありませんでした。

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