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睡眠には5つの役割がある

西野精治

著者:西野精治
米国スタンフォード大学医学部精神科教授 スタンフォード睡眠・生体リズム研究所所長 医学博士
https://profiles.stanford.edu/seiji-nishino

本サイトは西野精治氏による著書「睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服する」の内容を、著者及び株式会社KADOKAWAより許諾を得て一部掲載しています。お買い求めは上記リンクが便利です。
※ 図版・テキストのレイアウト・表現など、本書と本サイトの内容は一部異なる場合があります。

睡眠の役割

 睡眠・覚醒が脳の自発的な活動であることがわかってから、睡眠の役割も明らかになってきました。いまだ解明されていないこともまだまだあると思いますが、現在わかっている睡眠の役割は、次の5つになります。

① 脳と体に休息を与える
② 記憶を整理して定着させる
③ 自律神経とホルモンバランスを整える
④ 免疫力を上げる
⑤ 脳の老廃物を除去する

 2種類の睡眠があることがわかってから、睡眠には脳と体に休息を与える以外の役割もあるのではないかと考えられてきました。

 いまでは、起きているときに五感を通じてインプットされた脳の情報が、睡眠周期を繰り返すことで整理され、記憶として定着することがわかっています。初期の研究では、レム睡眠での記憶の定着が注目されましたが、記憶の定着には、種々の過程があり、浅いノンレム睡眠も関与することが続いて明らかになり、最近の研究で、入眠直後のもっとも深いノンレム睡眠のときに、脳の大脳皮質側頭葉の奥深くにある海馬という場所に一時的に保管された情報(五感からインプットされた情報)が、脳の表面にある大脳皮質に移動し、長期記憶として保存されるという報告もあります。

 1968年には、最初の深いノンレム睡眠のときにグロースホルモン(成長ホルモン)が活発に分泌されることがわかりました。脳や体に休息を与えるだけでなく、筋肉や骨に新陳代謝を促していたのです。また、グロースホルモンは、自律神経のバランスを整えるのに重要な役割を果たしています。

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 睡眠と免疫力との関連性もわかってきました。睡眠不足になると、感染症になりやすいことなどが実験で確認されています。インフルエンザの予防接種を受けても、睡眠が乱れると予防接種の効果が認められなかったという報告があるほどです。

脳の老廃物を流すグリンパティック・システム

 睡眠の役割として、ここ数年でわかってきたことのなかに、脳の老廃物を流すグリンパティック・システムがあります。

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 体のなかの老廃物は、リンパ系に集められ、血管を通って尿として体外に排出されます。しかし、脳にはリンパ系がありません。体のなかでもっとも活発な臓器である脳の老廃物は、グリア細胞の表面に水を取り込む仕組み(ウォーターチャンネル)で洗い流しています。これが、グリンパティック・システム。覚醒しているときも老廃物の除去作業は行われていますが、睡眠中のほうが4~10倍も活発に行われています。

 たとえば、プロ野球で使用する球場で、飲んだり食べたりして出たゴミを試合中に掃除するとなると、観客がたくさんいるため、なかなかスムーズには行えません。しかし、試合が終わって観客がいなくなってからなら効率的に掃除できます。しかも、観客の足元に隠れていたゴミなども拾えて、試合中のときよりきれいに掃除できます。睡眠中に老廃物の除去が活発になるのは、それと同じような仕組みなのかもしれません。

 睡眠不足になると、老廃物の除去作業が滞り、脳にゴミが残ることになります。脳のゴミとも言われるアミロイドβなどの老廃物が残ると、アルツハイマー病などの認知症や神経疾患のリスクを高めることになります。

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