雷帝/The Thunder King

第一次大戦より12,200年前のこと。レイシェンは神(＝タイタン)の力を求め、同盟関係にあったザンダラリ・トロールと共に、現カリムドール大陸のウルドゥム地方(当時パンダリアとカリムドールは地続きだった)へと遠征した。狙いはトルヴィアたちが守るタイタン遺跡とその技術である。タイタンキーパーの力を持つレイシェンを酷く恐れたトルヴィアたちは、やむを得ずタイタンの技術を起動。緑豊かなウルドゥムは死の砂漠へと還り、レイシェンも命を落とした。
レイシェンの遺体は回収され、忠臣たちによって陵墓に安置された。

レイシェンの死より200年後、虐げられてきた奴隷たちによるパンダレン革命が発生。殆どの魔古は殺されるか国外へ亡命して散り散りとなり、パンダリアにはパンダレンの帝国が誕生した。その後、何度か魔古族とザンダラリによるパンダリア侵攻があったが、その全てが失敗に終わった。やがてザンダラリもパンダリアから兵を引き、魔古は歴史の表舞台から姿を消した。

そして現代。古代戦争以来一万年間霧の中で行方不明だったパンダリアが再び発見され、世間を俄かに騒がせた。
多くの勢力・冒険者が新大陸へと船を進め、その中にはザンダラリ、そして魔古氏族の姿もあった。
野心的な一部の魔古は自ら王を名乗って蜂起したが、尽くがパンダレンと冒険者の手により鎮圧されていった。
一万二千年の悲願―― 帝国再興のために、魔古には今こそ絶対的な指導者が求められていた……。

雷帝がキーパーの力を手に入れた経緯について、上記のような「狙って奪った」がパンダレンの通説である。
一方で、それと異なる可能性を示唆させる歴史書、イベントも複数残されている。

以下はWorld of Warcraft: Chronicle で語られた後付け 真相である。

かつて、サーゲラスの裏切りによってタイタンの幹部会「パンテオン」が壊滅した時、
パンテオンの最長老「アマンスル」は断末魔の最期の力を第一の僕「ラー」へと送信していた。
その頃、タイタンキーパー「ラー」はパンダリアで魔古を従え世界創造に従事していたが、
突如送られてきた力の断片から主人の死を悟ると、絶望のあまり職務を放棄して地下に潜ってしまった。
ラーに仕える魔古たちは、主人の帰還を従順に待ち続けていたが、肉の呪いを受け、次第に不信を募らせるようになった。

やがて百王の時代が訪れ、魔古族の若者「レイシェン」が生まれた。
レイシェンは優れた将軍だったが、彼には勝利と征服以上の夢があった。「沈黙してしまった神を目覚めさせる」ことである。
レイシェンは、今まで誰もが恐れて足を踏み入れなかった聖域、神の住処へと向かい、そしてラーと出会った。

レイシェンはラーに問いかけた。「我々魔古族はどうすればいい」。ラーは何も答えない。
そのような一方的問答を繰り返すうち、レイシェンはラーが深い絶望に伏せているだけだということに気が付いた。
レイシェンは、かつて魔古が「神」と崇めた存在の情けなさに失望し、激怒した。その怒りがラーを再び目覚めさせた。

ラーは自身の絶望を伝えようとしてか、絶望の根源、アマンスルの魂の残火をレイシェンに見せた。
その煌めきを見たレイシェンは絶望するどころか、むしろ新たな使命感に燃えていた。
「パンテオンが死に、その僕が腑抜けならば、代わりに私がその役目を引き継ごう」、と。
レイシェンは無言でラーを拘束し、キーパーの力とアマンスルの力を奪い去った。

斯くして、「雷帝」が誕生した。